5月25日に政府の緊急事態宣言が全面的に解除されて数週間がたちます.人々は解放感を味わいつつもCOVID-19の第2波・第3波の影におびえる毎日ではないでしょうか.

COVID-19との戦いは長く続くと思われ,共存を前提とした生活様式が始まっています.その新しい生活様式のヒントになればと,筆者の所属する株式会社かんでんCSフォーラム(総合マーケティング会社)では緊急事態宣言下の生活実態について自主調査を実施しました.調査は,全国の18歳以上の男女1,030名を対象にインターネットで行いました(実施時期:6月5日~6月7日).緊急事態宣言下での生活実態について広く質問していますが,ここでは主に自粛生活におけるストレスについて取り上げたいと思います.

Withコロナの新しい生活様式を探っていく上で,もしくは第2波・第3波が到来した際に,少しでも快適な自粛生活を送るためのサービス開発の一助となれば幸いです.

ストレスの主要3大キーワード

緊急事態宣言下で「もっともストレスを感じたこと」を調査の中で自由回答で記載してもらったところ,一番多かったのは「外出できない」ことでした.二番目に多かったのは外出時の「マスク着用」,そして三番目に多かったのが「友人や離れて住む家族等と会えない」ことでした.以降,「家族がずっと家にいる/一人の時間がない」「旅行・遠出できない」「食事の用意/家事の負担」「外食できない」「感染の恐怖」「経済面の不安」「子供の面倒」「会社・職場・仕事関連」と続きます.(表1参照)

これらの自粛生活のストレスをまとめると主には大きく三つのキーワードが見受けられました.

一つ目は,「外出」というキーワードです.普段はそれほど意識していない外出というものが,こうもリフレッシュになっていたのか,ということは皆さん改めて実感したのではないでしょうか.「旅行」はもちろん,「外食」「ウィンドウショッピング」「スポーツ観戦」など趣味の外出などが出来ないということ,また,外に出られないために遠方の家族や友人,恋人に会えないなど「人と会えない」というストレスも多くあがっていました.オンライン飲み会やオンライン宿泊,オンライン帰省といった,オンラインでの新たな繋がり方やサービスも目にしましたが,リアルの繋がり・リアルのサービスの代用にどの程度なり得るのか,今後が注目されます.

二つ目のキーワードは「家」です.つまり在宅ワークになったり学校が休みになったことにより「家族がずっと家にいる/一人の時間がない」「子供の面倒をみるのが大変」食事の用意/家事の負担」というストレスです.

このストレスは,女性において多くあげられました(表2参照).ご主人が在宅ワークで家にいる時間が増えても,家事・育児をするのはやはり女性が多く,女性の家事負担が増したようです.女性活躍推進が言われるようになり,時短家電など家事軽減の商品・サービスが普及しだしましたが,家事負担の軽減ニーズはさらに高まりそうです.

また,在宅ワークという側面から家をみると,仕事をする環境としてのストレスも感じられています.緊急事態宣言下で在宅ワーク(オンライン授業を含む)を行った人にその作業場所を聞いたところ,「個人の部屋」が43.2%,「リビング」が37.3%と他の項目より割合が多くなっていました(表3参照).更にその作業場所の悩みを聞いたところ(表4参照),「適した姿勢を保てない」39.6%,「必要な作業スペースの広さがとれない」27.8%,「必要な照度がとれない」17.2%など様々な悩みがあげられており,「特にない」という人は29.0%のみでした.新たな生活様式として在宅ワークが進んでいくのであれば,家の在り方の検討も必須かと思われます.

そして三つ目のキーワードは「衛生」です.気温の上昇,梅雨の到来に伴い,マスク着用による熱中症の注意喚起がされていますが,4月5月の段階でも,マスクを着用することのストレスが二番目に多くあげられていました.「息苦しい」「マスクが暑い」「肌が荒れる」といった意見です.夏場に向けてマスク着用については工夫が求められます.また今は解消されたようですが,「マスクが手に入らない」「マスクが高額」「消毒薬が手に入らない」といった衛生商品の不足もあげられていました.「手や買ってきたものをイチイチ消毒しなければならない」という衛生行為自体のストレスもあげられています.(表1参照)

こういった感染防止や自衛の行動へのストレスがあげられる一方,「感染の恐怖」も多く感じられており,「自粛しない人たち」がいること,そうした人をニュースで見ること自体もストレスとして感じられていました.

新しい生活様式に向けて

ニュースでは「自粛疲れ」「コロナ疲れ」という言葉をよく耳にしましたが, その疲れの内容は一体何だったのか,実際に調査をしてみると以上のような結果となりました.

Withコロナの新しい生活様式として,買い物や娯楽,移動,行事,働き方などにおいて,感染を予防し自衛する様々なスタイルが始まっています.第1波で経験したストレスが少しでも軽減できるよう,例えば,リフレッシュのためのVRなどの体験型サービス,在宅ワークが快適にできるためのリビングの工夫(スペース確保のための収納の工夫,時間作業でも疲れないリビングテーブル用の椅子の開発,在宅ワーク中でもリフレッシュできるようオン・オフの切り替えをしやすい空間の提案等),食事の準備の負担削減のためにまとめて作ったものを大量に保存できる大容量の冷凍庫や1週間のお昼を日替わりで届けてくれるデリバリーサービス,衛生面では夏でも涼しいマスク・肌にやさしいマスクなど様々な解決方法があると思われます.今回の結果を参考にぜひ,企業の皆様に商品やサービスの開発や改善を検討して頂きたいと思います.

表1 最もストレスに感じたこと(自由回答カウント)
表2 最もストレスに感じたこと(自由回答カウント)上位10位の男女内訳 <%は横計>
表3 あなたご自身は緊急事態宣言の発令から解除までの期間に
家の中のどこで在宅勤務・オンライン授業をしましたか? 主なものを一つお選びください.
※回答は緊急事態宣言下で在宅ワーク(オンライン授業含む)を行った169人
表4 緊急事態宣言の発令から解除までの期間に前問でお答えいただいた作業スペースの不満について,
あてはまることがあればすべてお選びください.
※回答は緊急事態宣言下で在宅ワーク(オンライン授業含む)を行った169人

著者紹介

水野 啓子

所属企業名:株式会社かんでんCSフォーラム http://www.kcsf.co.jp/
所属部署:営業部 マーケティングソリューショングループ 
役職:グループマネジャー 
社内にマーケティング機能とコールセンター機能とITコミュニケーション機能を持ち,顧客接点を中心としたマーケティング活動を得意とする.

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