本テーマでは,地方の活性化について扱う.
地方の活性化は,現在まで,国の政策として多くのことが行われてきている.2014年にまち・ひと・しごと創生法が制定され,第1期地方創生(2015-2019)に続き,2020年より第2期地方創生(2020-)が行われている(内閣府地方創生推進事務局 2017).以前には,田中角栄首相による「日本列島改造論」,大平正芳首相による「田園都市国家構想」,竹下登首相による「ふるさと創生」などの施策が行われてきた.
現在進行中である地方創生は,人口減少や高齢化といった現在の日本が直面する深刻な課題への解決策として期待されている(総務省 2020).そのため,地方の活性化を扱うことは十分有意義であると考える.
本テーマでは,地方の活性化をサービス学の視点から捉え直し,その可能性を明らかにしたい.
流れとしては,事例研究と理論研究を織り交ぜた構成となっている.まずはじめに,地方活性化に関する好事例をいくつか紹介する.具体的には,以下の内容を予定している.

1.地方の人材不足をどう解決するか
  地方活性化のためのテレワークの活用
2.高等教育による地域活性化
  観光人材育成による試み
その他,内容が決定次第,順次掲載していく.

これらの事例は,ひとことで言えば,地方の人口減少や高齢化に対して,サービス提供者と受益者とをつなぐ試みである.例えば,高等教育の事例は,短期大学を作り人材を育成することで,県外から学生を呼び込み,学んだ人たちがその土地の良さを伝えていく.その関係は教育サービスの提供者と受益者という関係から始まり,後にその受益者が新たなサービスの提供者となっていく.このように,地方活性化の優れた事例には,サービス学の観点から興味深い事象が見えてくる.本テーマでは,複数の事例を紹介した上で,それらを横断して,サービス理論に照らし合わせ,地方の活性化の成功要因を考察していきたい.
本テーマは,サービス学に関わる研究者はもとより,ビジネスパーソンや行政の担当者など実務の最前線の方々を読者として想定している.これらの知見が,読者の日々の業務に,何かしらのヒントを提供できれば幸いである.

参考文献

内閣府地方創生推進事務局(2017).地方創生をめぐる現状と今後の課題.https://www.soumu.go.jp/main_content/000635353.pdf 2021年8月4日取得.
総務省(2020).令和2年版地方財政白書.https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou
/32data/2020data/mokuji.html
2021年8月4日取得.

著者紹介

安藤 裕

宮城大学事業構想学群准教授.北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士後期課程修了.博士(知識科学).2004年から2018年まで富士ゼロックス(株)にて,ドキュメントのユーザービリティに関する研究,コンサルティングに従事.GfK Japan,ユーイズム(株)にてマーケティング・リサーチに従事.2021年より現職.専門は,認知科学,感性工学,UX.

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