はじめに

「テレワーク」は,語義的には「テレ(遠隔)」で働く(ワークする)ことであるが,政府等ではより具体的に,「テレワークとは,情報通信技術を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」(厚生労働省)と定義している.すなわちテレワークは,近年の情報通信環境の高度化に伴う労働サービスの提供方法の一つの形態であると考えられる.テレワークをこのようにとらえると,テレワークはサービスを提供する側である「個人」の立場と,サービスを受け取る側である「企業」の立場の二つの要素から考えることができる.
一方,地域活性化については,かつては外部から成長産業を誘致することが施策の基本であったが,近年は地域資源の活用を中心に据えた内発的な活性化が主流となっている.テレワークを地域活性化の観点から論じる際には,地域活性化施策の持つ「誘致」の要素と「内発」の要素の両方から考えるとわかりやすい.
本稿では,テレワークと地域活性化の持つそれぞれの要素をもとに,地域活性化の視点から見たテレワークについて,テレワークにおける個人と企業(組織)の関係,地域活性化における誘致と内発の関係,の二つの視点を設定して論じる.

テレワークの意義・効果

コンピュータを用いて遠隔で仕事をすることについては,1970年代前半にNilesがtelecommutingという言葉を用いて論じたのが最初と言われている.その後「第三の波」においてアルビン・トフラー(1980)は,コンピュータを活用した新しい生産方式により「家庭」が仕事の場になる(p.280)とし,「エレクトロニック住宅」が実現する方向に向っていると述べている.
テレワークの持つ概念はその当時から現在に至るまで大きな変化はないが,テレワークが社会に対して提供できる価値(サービス)は大きく広がっている.総務省は,テレワークの意義・効果として,①少子高齢化対策の推進,②ワーク・ライフ・バランスの実現,③地域活性化の推進,④環境負荷低減,⑤有能・多様な人材の確保・生産性の向上,⑥営業効率の向上・顧客満足度の向上,⑦コスト削減,⑧非常災害時の事業継続の8つの項目を示している.このようにテレワークの守備範囲は多岐にわたっているが,わが国におけるテレワークに対する注目点は社会のニーズとともに変遷している.
2002年に決定された地球温暖化対策推進大綱の中では,交通における省エネ対策としてテレワークの活用が指摘されていた.2007年になると,安倍首相(第1次安倍内閣)の施政方針演説の中で,女性支援のツールとしてテレワークが言及された.施政方針演説の中でテレワークが言及されたのは初めてのことである.2009年にはテレワークで働く人(テレワーカー)に対するメリットだけでなく企業経営にとってのメリットも示され,国土交通省,総務省,厚生労働省,経済産業省の4省により「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」が作られた.ここでは,テレワークのメリットを,企業経営,オフィスワーカー,社会の3つの観点から整理している.
2011年3月11日に発生した東日本大震災は,直後には首都圏の交通機関の壊滅,その後は原子力発電所の事故・稼働停止による計画停電をもたらし,テレワークの持つ事業継続効果および省エネルギー(節電)効果が注目されることになった.この時期のテレワーク関連記事に占める節電関連記事の割合をみると,震災直後の2011年3月から増加し,6月にはテレワーク関連記事の35%を占めるようになった.その後一時減少したものの冬の電力需要期を前に記事は増加し,深刻な電力不足の懸念の中でテレワークの節電効果が期待されていたことが分かる.しかし1年を経過すると節電関連の記事はほとんど見られなくなり,テレワークの省エネ(節電)効果への期待は一過性に終わっている(中西, 2015).
2013年2月28日に第183回国会で行われた第2次安倍内閣発足後最初の施政方針演説においては,「(略)テレワークや遠隔医療など,社会に変革をもたらし得るIT活用.日本に新たな可能性をもたらすこれらのイノベーションを(中略)力強く進めてまいります.」という表現でテレワークが言及され,テレワークに社会変革のためのイノベーション手段としての役割が求められた.
2016年9月に安倍首相(第2次安倍内閣)を議長として発足した「働き方改革実現会議」が2017年3月28日に決定した「働き方改革実行計画」においては,「柔軟な働き方がしやすい環境整備」(p.15)としてテレワークの普及を図ることが重要であることが示された.これにより,政府の重点施策である「働き方改革」のテーマの一つとしてテレワークが位置付けられ,広く注目されることになった.
2017年にはオリンピック東京大会の開会式の予定日であった7月24日を「テレワーク・デイ」として,全国一斉のテレワークを実施するように呼び掛けた.これは,「2012年ロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会では,交通混雑によってロンドン市内での移動に支障が生じるとの予測から,市内の企業の約8割がテレワークを導入」(総務省,2017年4月18日報道資料)したとされるロンドンでの事例にならったものである.2018年以降は大会期間中の通勤者を減らすことで交通混雑が緩和されることを期待して,東京大会の開催日程を想定したより長い期間を「テレワーク・デイズ」としてテレワークの実施を呼び掛けた.
2020年に入り新型コロナウイルス感染症が広がると,政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は,2月25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定し,企業に対してテレワークを強力に呼びかけた.テレワークは感染対策としての人流抑制に効果が期待される一方で,業務効率やコミュニケーションの問題などのテレワークをめぐる課題が顕在化してきた.
以上のように駆け足で振り返ると,これまでにテレワークはいろいろな側面から注目されてきたことがわかる.総務省などが示すようにテレワークの効果は広範であり,社会課題に対する「万能薬」のような様相を呈している.しかしそのことは具体的な効果について実感しづらさをもたらしており,効果をわかりやすく整理することが求められる.そこで本稿では,「地域活性化とテレワーク」に焦点を絞り,2つの視点で整理する.

地域活性化とテレワークを考える視点

視点1:テレワークの主体は組織か個人か

1番目の視点として,地域活性化を目指したテレワークの主体の属性(組織か個人か)に着目する.テレワークを考えるときに,企業などの組織が導入するテレワーク(テレワークの受入側)に着目する見方と,個人(テレワーカー)が実施するテレワーク(テレワークの提供側)に着目する見方がある.政府等が実施しているテレワークに関する調査でも,その目的に応じて企業を対象とした調査と個人を対象とした調査があり,国土交通省が毎年実施している「テレワーク実態調査」は個人(就業者)を対象としてテレワーク実施率を調べているのに対し,総務省が実施している「通信利用動向調査」では企業のテレワーク導入率を調べている.
地域活性化との関連でテレワークをみると,地域に立地する企業が社員にテレワーク導入を図ることで企業自体の業務効率化を実現し,結果として地域経済の活性化に貢献するという組織に着目したテレワーク導入と,地域の企業が社外の人材が実施するテレワークを戦略的に活用して企業経営の革新を図ることで企業の成長をもたらし,地域活性化に貢献するという個人に着目したテレワーク導入がある.
企業によるテレワークの導入は新型コロナウイス感染拡大に伴い進展した.しかしながら大都市部に立地する大企業ではテレワークの導入率が高い一方で,地方の企業や中小企業での導入率は低く,都市部と地方の格差は広がっている.テレワークの導入が企業の効率化を向上させるとすれば,テレワーク導入率の格差はそのまま都市部と地方の経済格差の拡大につながることが懸念される.
一方,地方の企業にとってテレワークの活用により企業に必要な人材確保ができることは大きな意味を持っている.企業が,新分野進出,市場開拓,新商品開発・イノベーション,SDGsへの対応,DXへの対応といった近年の社会変革に対応しようとした時,それまで保有していた人的資源だけでは十分な活動が行えず,しかも地元で必要な人材を確保するのが困難ということが起きている.そうした際にクラウドソーシングなどを活用してテレワークで業務の発注ができれば低コストかつ短期間で人材確保ができる.近年のフリーランスや兼業,副業の普及により,人材供給の幅が広がっており,こうした「個人」に着目したテレワークの可能性は高まっている.

視点2:誘致による活性化か内発的活性化か

地域外から成長産業を地域に誘致することによる地域活性化は,戦後1990年代前半まで行われてきた典型的な立地政策の手法であった.1960年代から70年代にかけては,新産業都市の建設などにより,重化学工業などの製造業(工場)が地方に誘致され,各地に工業団地が建設された.1980年代になると工場の海外移転が進み,国内の成長産業は製造業からハイテク産業へとシフトした.これに伴い立地政策は高度技術の地方移転に軸足を移し,全国にテクノポリスが建設された.その後,働きすぎ是正のために余暇の拡大が叫ばれると1987年にはリゾート法が作られ,成長産業が製造業からサービス産業にシフトすると頭脳立地法が作られサービス業の地方展開が図られた.しかし1990年代後半になると,地方に誘致する成長産業は見当たらなくなった.その結果,立地政策は誘致から,地域資源の活用による内発型の政策へと転換した.現在は,地域の資源をそれぞれの地域が自らの工夫により活用していくことで地域活性化を図り,国はそれを側面支援するようになった.
同様の動きは,テレワークによる地域活性化の場面でも見られる.テレワークによる地域活性化の方策としては,典型的には都市部の企業のサテライトオフィスを地方に「誘致」し,都市部の人に「地方に来てもらう」ことで,地域経済の活性化を図ろうとするものである.総務省が2015(平成27)年度から2018(平成30)年度にかけて実施した「ふるさとテレワーク」は,地方にサテライトオフィスを設置して,そこに進出した企業がテレワークにより都市部の仕事を行うものである.2015年度には北海道斜里町,京都府京丹後市など全国15地域で実証事業が実施された.「ふるさとテレワーク」では,地方のオフィスに都市部の企業が社員を派遣または移住させ,本社機能の一部をテレワークで行う類型,子育てや親の介護を理由に地方への移住を希望する社員がテレワークで勤務を継続する類型,クラウドソーシング等を利用し,企業または個人事業主として都市部の仕事をテレワークで受注する類型,都心部の企業が,テレワークで働く人材を,新規に地方で採用する類型の4つの類型が考えられているが,いずれも地方の人が都市部の仕事を行うものである.また近年は,都市の企業に勤める人が,地方で家族と休暇を楽しみながら仕事もできる仕組みとして「ワーケーション」が注目されている.ワーケーションを行う人を「誘致する」ため,和歌山県白浜町や長野県軽井沢町のようにワーケーションのための環境整備を進めている観光地が増えている.
しかし最近は,副業や兼業で働く人が増えていることに着目して,そうした副業人材やフリーランスを,テレワークを用いて活用し,地域の企業の変革を図る動きもある.これはテレワークにより,地域の企業自体が成長することで地域が活性化することをめざすもので,「内発的」な活性化であるといえる.誘致型のテレワークが「地方の人が都会の仕事をする」のに対し,この内発型のテレワークは「都会の人が地方の仕事をする」と言える.この考えをより広げると,テレワークを利用して都会,地方に限らず地域内外の人を幅広く活用することにより地域の企業や団体が地域発のビジネスを展開するという,内発的な地域活性化につながる取り組みになる.

地域活性化テレワークの4つの類型

以上の視点で示したように地域活性化に関わるテレワークを「組織型/個人型」と「誘致型/内発型」の2つの軸で考えると,その組み合わせで4つの類型に分けることができる(図1).

図1 地域活性化から見たテレワークの類型

①組織型テレワーク&誘致型テレワーク

都市部など地域の外に立地する企業が地方に進出し,そこで社員がテレワークを行うかたちである.テレワークによる地域活性化を示すものとしてよく知られている事例が多く,総務省のふるさとテレワーク実証事業もこの類型である.
有名な事例として,徳島県神山町にサテライトオフィスを設置したSansan株式会社の事例がある.Sansanは企業向けのクラウド名刺管理サービスを行う会社で,東京都千代田区に本社があるが,2010年10月に徳島県神山町に築80年の古民家を借りてサテライトオフィス(神山ラボ)を開設した.神山町にサテライトオフィスを開設した理由として同社は,現地のNPO法人グリーンバレーのバックアップ,豊かな自然環境,高速インターネット環境の3点をあげている(Sansanホームページ).このうちNPO法人グリーンバレーは神山町国際交流協会を前身に2004年に設立した団体で,地元の活動がもともとあったことが誘致成功の大きな要因となっている.また,徳島県は2011年7月のテレビのアナログ停波後も近畿圏の番組の視聴を可能にするためにケーブルテレビ網の整備を進めた.この結果,徳島県では全県で高速インターネット環境が整備されている.このことはテレワークを活用する企業の誘致における徳島県の優位性となっており,神山町以外にも三好市,美馬市,美波町などで多くの企業がサテライトオフィスを開設している.
北海道斜里町では,2015年より「しれとこ斜里テレワーク」事業が行われている.この事業は斜里町が中心となってテレワークを行う企業を斜里町に誘致する取り組みである.斜里町の市街地にはテレワークセンターである「しれとこらぼ」が設置され,コワーキングスペースや居住スペースを提供している.また,ふるさとテレワーク実証事業をきっかけに町内の有志が「一般社団法人知床スロウワークス」を設立し,「しれとこらぼ」の管理運営や斜里町を訪れたテレワーカーのサポートを行っている.2020年には新型コロナの影響で前年よりは少ないものの,のべ67社,165人の社員が斜里町を訪れた(しれとこ斜里テレワークホームページ).
いずれの事例でも,テレワーク企業の誘致には,コワーキングスペースや良好な通信環境の提供などのハード面の整備とテレワーカーへのソフト面での支援など,進出企業やそこで働くテレワーカーに対する地元のサービス提供が重要な役割を果たしている.

②個人型テレワーク&誘致型テレワーク

都市部など地域の外にいる個人が地方に移動して,テレワークで仕事を行う類型で,近年注目されている「ワーケーション」がこれにあたる.「ワーケーション(workation)」は,ワーク(work)とバケーション(vacation)からの造語であるが,休暇先でテレワークにより仕事をするもので,新しい仕事のかたちへの対応となっている.効果としては,連続長期休暇が可能になる,滞在型観光の促進になる,企業誘致への発展も期待できる,などがあげられている.欧米では以前からあった概念であるが,日本では最近,観光振興の観点から政府や自治体が推進している.
ワーケーションの事例としては,和歌山県や和歌山県白浜町の取り組みがよく知られている.和歌山県はもともとIT企業の誘致を積極的に進めてきており,特に白浜町は,クオリティソフト株式会社の本社移転,NECソリューションイノベータ株式会社のサテライトオフィス開設など企業の進出が目立っている.これらの企業は地域との連携を図り,自社のイノベーション創出の場としてサテライトオフィスを活用している.これは上述の類型(組織型&誘致型)になる.和歌山県は,こうした企業誘致の取り組みに加え,近年はワーケーションに力を入れ「個人」の誘致に取り組んでいる.ワーケーションの専用サイトを開設し,県内各地に立地するコワーキングスペースや宿泊施設の紹介,各種体験イベントなどの地域の活動の紹介を行うとともに,県内各地に立地するワーケーションをコーディネートする組織の紹介も行っている.中でも白浜町は,西日本でも有数の観光地で宿泊施設が充実し多くの観光客が訪れていること,町内に空港があり首都圏からのアクセスがいいこと,耐災害ネットワーク実証実験の関係でWi-Fiが無料開放されていること,などの条件が整っていることから,ワーケーションの場として注目されている(Wakayama Workation Projectホームページ).
長野県もワーケーションに力を入れている.長野県には首都圏や中京圏からのアクセスの良さ,豊かな自然やスキー・温泉などの地域コンテンツ,多くの観光客,移住したい都道府県ランキング1位であるなどワーケーションの条件が整っていることから,ワーケーションの取り組みを「信州リゾートテレワーク」として情報発信を行っている(長野県庁ホームページ).長野県軽井沢町では2018年に,軽井沢観光協会,商工会,旅館組合等が連携して「軽井沢リゾートテレワーク協会」を設立し,首都圏でのフォーラム開催による企業との連携,各種体験会の開催,コワーキングスペースや宿泊施設の紹介,テレワーク研究の推進等の活動を実施している.軽井沢の魅力を発信することで,ワーケーション人口の増大を図っている(軽井沢リゾートテレワーク協会ホームページ).
いずれの事例も,自治体が積極的に既存の観光資源を活用するとともに,地元と一体になって体験型のアクティビティなど新たなコンテンツを開発・提供することにより,ワーケーションという形で地域外からのテレワーカーの導入を図っている.現在は新型コロナ禍のために観光客や交流人口の増大を見込むことが困難な状況であるが,ポストコロナを見据えて,どのようなサービスの提供を行っていくのかが課題となっている.

③組織型テレワーク&内発型テレワーク

この類型は,地域に立地する企業が,社員にテレワークを導入することで業務効率の向上をはかるかたちであるが,本質的には地域に限定した取り組みである必要はない.都会や地方といった立地場所に関係なく,その地域の企業がテレワークを活用することでビジネス活動が活発になり,そのことが地域活性化につながる.
テレワークを活用するためにはトップの経営判断が重要であるが,その判断を促すきっかけを自治体が作った事例として,2006年度から2008年度にかけて高知県が取り組んだテレワークを活用した行政アウトソーシングがある.これは高知県が行政の効率化と財政の健全化を同時に達成するために,県庁の業務を県内の企業やグループにテレワークを活用してアウトソーシングしたものである.県は,議事録作成や資料作成,研修事業など様々な行政事務をアウトソーシングしたが,テレワークを活用することで県庁から離れた地域でも県の業務を受注することができた.中山間地域に住む子育て中の女性が,テレワークを活用することで県の会議の議事録作成で現金収入を得ることができたなど,規模は小さいながらも地域活性化効果がみられた.また地域の工務店やタクシー業者等が研修事業などの新規事業を展開する際にもこの取り組みが活用された.
高知県が注目した行政サービスは,どの地域にも存在する「地場産業」である.行政サービスを地元の企業で受注できる仕組みを構築できれば地域活性化につながる.この活性化を県庁から物理的に離れた地域でも実践するために,テレワークは不可欠な手段となっている.

④個人型テレワーク&内発型テレワーク

地方に立地する企業が,都市部に多くいる副業・兼業で働きたい人にテレワークを利用して働いてもらうのがこの類型である.テレワークの活用により全国から事業に必要な人材の調達を行うことが可能となるため企業のイノベーションが実現する.その結果,地域活性化がもたらされる.地域活性化の観点から自治体が都市部の人材と地元企業とのマッチングを図る事例も多い.国も自治体が行うマッチング事業を,地方創生推進交付金を利用して助成している.
石川県輪島市にある老舗の和菓子店「柚餅子総本家中浦屋」は,新商品販売のためのECサイトを整備するため,東京在住の外資系メーカーに勤める人など5人をテレワークで雇用した.この5人は石川県が主催した社会人向けのインターンシップ交流イベントに参加した人であり,地元では見つけるのが困難な人材であるが,テレワークによる副業人材ということで雇用することができた(日本経済新聞,2021年3月6日版).
宮城県丸森町は2020年3月に,「東京に住み,宮城県丸森町で副業」をテーマに丸森町の企業と首都圏に住みながら地方で副業を始めたい人とのマッチングイベントをオンラインで開催した.そこでは,干し柿の生産・販売を行っている地元企業の商品価値向上のための施策を考える人や,自動車用部品の線材加工を行っている地元企業の新商品開発のサポートをする人材を募集した(「地方で副業しナイト」ホームページ).
人口が少なく人材調達が難しい地方の企業にとって,都市部の豊富な人材を活用できることはテレワークの持つ新たな可能性になっている.近年,兼業・副業が増えたことにより,多様な人材供給が可能になった.テレワークの活用による人材流通の円滑化は,地域活性化のボトルネックであった人材の問題を解決することが期待される.

まとめ

テレワークは労働サービス提供の新たな手法であり,様々な方向から地域活性化をもたらす効果がある.そしてその効果は,地域活性化で活用するテレワークのかたちに応じた手段を取ることで有効に発揮される.本論で論じたとおり,地域活性化効果に着目したテレワークには,①企業誘致の手段としての利用,②ワーケーションによる観光客の増加,③地域の企業の業務効率改善,④地域で不足する人材の確保,の4つの類型を見ることができる.各類型のテレワークを現実のものとし地域活性化につなげるためには,それぞれの類型に応じた異なる対策が必要である.例えば企業誘致のためには,コワーキングスペースや通信環境とともに,テレワーカーをサポートする体制が求められる.ワーケーションの推進のためには既存の観光地の資源を生かしつつテレワーク環境を整備することが求められる.地域の企業の効率改善のためには経営者の意識改革が求められるが,それを後押しするような自治体の動きも重要である.地方での人材確保のためには都市部の副業・兼業人材と地域企業のマッチングが求められる.
今日,新型コロナの感染拡大,働き方変革(兼業・副業など個人の活動の増大),多様性の広がり(地域で言えば地域資源を活用した内発型の活性化),DXの進展(個人の活動や多様性を促進)など様々な社会変革が進展している.そうした変革期における地域活性化のツールとしてテレワークを活用するためには,対応すべき変革のかたちを見極めたうえで,その変革に対応したテレワークを志向していくことが求められる.

参考文献

厚生労働省.「テレワークの定義」,テレワーク総合ポータルサイト,https://telework.mhlw.go.jp/telework/about/(2021年10月3日アクセス)
アルビン・トフラー(1980).「第三の波」,日本放送出版協会(徳山二郎監修)
中西穂高(2015).「テレワークの節電効果に関する考察」,第17回日本テレワーク学会研究発表大会予稿集,pp.3-8
Sansanホームページ.「サテライトオフィス『Sansan神山ラボ』に新しいワークスペースを開設しました」,https://jp.corp-sansan.com/news/2013/130116_2712.html(2021年10月3日アクセス)
しれとこ斜里テレワークホームページ.「ワーキングスペースしれとこらぼ」,https://www.shiretokolabo.com/(2021年10月3日アクセス)
Wakayama Workation Projectホームページ.https://wave.pref.wakayama.lg.jp/020400/workation/index.html(2021年10月3日アクセス)
長野県庁ホームページ.「“信州リゾートテレワーク”のご案内」,https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoshin/shinshu_resorttelework.html(2021年10月3日アクセス)
軽井沢リゾートテレワーク協会ホームページ.https://karuizawa-work.jp(2021年10月3日アクセス)
日本経済新聞(2021).2021年3月6日版,「リモート副業,地方潤す」
地方で副業しナイト.https://marumorifukugyo.peatix.com/(2021年10月3日アクセス)

著者紹介

中西穂高

帝京大学先端総合研究機構副機構長・産学連携推進センター長 特任教授。東京大学理学部卒,ペンシルバニア大学修士(都市計画),東京工業大学博士(学術)。経済産業省,高知県副知事,内閣参事官等を経て2012年より現職。専門はテレワーク、地域活性化、公共政策、産学連携。

おすすめの記事