サービス学会第13回国内大会が,2025年3月4日(火)から6日(木)にかけて立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開催された.主な会場は,OICの中に2024年4月に誕生した新棟であり,創造性と協働の促進を感じさせる空間設計が施されていた.大会テーマは「地域価値創生へのシナリオ;サービス共創に向けたトランスディシプリナリ」である.このコラムでは,今大会に参加したマガジン編集委員やOSの企画者が,それぞれの目線から大会や個別のセッションの模様を報告する.筆者からは大会の概況と大会場での催しをレポートしたい.

今大会では,大会場での基調講演2件と学会企画のプレナリーセッション3件,また4室での同時進行となった口頭発表セッション23件とオーガナイズドセッション(OS)7件,さらにポスター発表セッションが企画された.大会参加者数は235名(招待者含む),演題数は口頭発表セッションで68件,OSで28件,ポスター発表セッションで17件,合計113件であった.プログラム構成上の試みとして,口頭発表セッションでは1件あたりの持ち時間を,ここ数年の大会よりも長い30分とした.その狙いは異なる研究領域や実務課題に取り組む参加者たちの相互理解をじっくりと醸成することであり,結果として研究の背景や成果をしっかりと理解した上で活発な議論がなされたように思う.

大会テーマに沿って企画された基調講演では,初日に株式会社良品計画の河村玲氏より,同社の経営理念に基づく「ソーシャルグッド」の取り組みが紹介された.河村氏は千葉県南房総で「里のMUJIみんなみの里」「MUJI BASE KAMOGAWA」などの事業を推進しており,その経緯や事業デザインが説明された.印象に残ったのは,地域との関係性の結び方である.外部からきた営利企業による取り組みは,ともすれば刹那的なもの,場合によっては収奪的なものになりかねないが,同社では「地域への“土着化”」という言葉で説明されていたように,退かないこと,地域全体を持続可能にしていくことが意識されており,持続性のある関係が築かれていた.大会3日目には,三重大学地域イノベーション学研究科の西村訓弘氏が登壇し,「視点を変えて地域社会の未来を考える——例えば,人口減少は悪いことなのか?——」という刺激的なタイトルのもと講演した.社会統計や地域の調査に基づき,過疎や少子化といったネガティブな状況が,イノベーションの原動力としてリフレーミングしうることが示唆された.

また今大会では,学会企画のセッションの1つとして,学会の賛助会員企業の実践にフィーチャする「サービス現場の新たな課題と挑戦」が開催された.大会初日の午後に開催された同セッションでは,日本電気株式会社の木村好孝氏が登壇し,NECにおけるDX関連のサービス事例や産学連携の取り組みについての講演と,参加者を交えたパネルディスカッションが設けられた.このセッションは,学会活動の拡大を目指し,大会参加者以外もオンラインで参加できるハイブリッド形式で実施された.第1回と銘打たれており,今後の大会における継続的な実施が予定されている.

大会の担う機能として,参加者同士の懇親の場を提供することもまた重要である.今大会では初日の18時からOIC内のイベントホールにて立食形式での懇親会が設けられた.GANKOによるケータリングや立命館大学が携わる「地域価値創生」の1つであるクラフトビールに舌鼓を打ちながら,インフォーマルな会話が交わされた.加えて,2日目の昼および夜には「若手の会」によるランチミーティングと懇親会が開催され,学生や若手研究者・実務家が集い親睦を深めた.

以上が大会の概況である.最後になったが今大会のプログラム委員を代表して,参加された方々,現地実行委員会の皆様,また日々サービス学会に様々な立場からご支援をいただいている方々に,心から御礼を申し上げたい.

開会の挨拶
懇親会の風景

著者紹介

根本 裕太郎
横浜市立大学国際商学部,大学院国際マネジメント研究科准教授.博士(工学).民間企業,公的研究機関を経て2022年9月より現職.ウェルビーイング志向のサービスデザインに関心.第13回国内大会ではプログラム委員会で副委員長を務めた.

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