近年,製造業,サービス業に係わらず,多くの業種業態において「サービスデザイン」に関する取り組みが活発化している.サービスデザインにおけるデザインの対象は,現場でのオペレーションに止まらず,ビジネスモデルやエコシステムなど多岐に渡る.また,デザインにおける取り組みも,インダストリアルデザイナーによるものだけでなく,マーケターやエンジニア,あるいはユーザーも含めた幅広い活動を示す.このように,サービスデザインは目的や対象,活動主体が多岐に渡ることから,その捉え方も三者三様である.
サービスデザインに関する研究は,古くは1980年代にサービスマーケティング分野においてShostackらにより行われている(Shostack 1982).当初は,マーケティング戦略の立案やオペレーションの効率化を主な目的としていた.その後,1980年代後半からNew Service Developmentの名のもとに,Operations Managementなどの知見を活用し,サービスイノベーションを創出するためのプロセスに関する研究が活発化し始めた(e.g. Fitzsimmons 2000).2000年に入ると,サービス工学やサービスサイエンス,Product-Service Systemsなどの研究分野が立ち上がり,それぞれの分野の中でサービスデザインに関する研究が発展してきた(e.g. Morelli 2002).一方,Interaction DesignやExperience Designの分野でもサービスデザインに関する研究が行われており(e.g. Mager 2008),近年では,デザイン思考を取り入れたサービスデザイン研究も活発化している(e.g. Stickdorn 2012).また,サービスにおける価値は,提供者と顧客との相互作用を通じて共創されるため,サービスデザインにおいても,Participatory DesignやCo-Designの方法が積極的に取り入れられており(e.g. Alam 2002),Transformation Designの分野ではデザインの対象を社会や公共サービスに展開した研究も行われている(e.g. Cottam 2004). 本Webマガジンでは,このようなサービスデザインに関する取り組みを具体的な特集テーマにもとづき紹介する.これにより,サービスデザインの理論的な発展だけでなく,実践の促進に貢献することを期待したい.
参考文献
Alam, I. (2002). An exploratory investigation of user involvement in new service development. Journal of the Academy of Marketing Science, 30(3), 250-261.
Cottam, H., and Leadbeater, C. (2004). RED paper 01: Health: Co-creating services. London: Design Council.
Fitzsimmons, J., and Fitzsimmons, M. (2000). New service development: creating memorable experiences. Sage Publications, Thousand Oaks, CA.
Mager, B. (2008). Service design. In M. Erlhoff & T. Marshall (Eds.), Design dictionary: Perspectives on design terminology (pp. 354-357). Basel: Birkhäuser.
Morelli, N. (2002). Designing product/service systems: A methodological exploration. Design issues, 18(3), 3-17.
Shostack, L. G. (1982). How to design a service. European Journal of Marketing, 16(1), 49-63.
Stickdorn, M., and Schneider, J. (2012). This is service design thinking: basics, tools, cases. Wiley.
著者紹介
木見田 康治
東京都立大学 システムデザイン学部 知能機械システムコース・助教.博士(工学).2011年首都大学東京大学院システムデザイン研究科博士課程修了.東京理科大学工学部第二部経営工学科・助教を経て,2013年より現職.主としてサービス工学,Product-Service Systems,設計工学の研究に従事.11年日本機械学会設計工学・システム部門奨励業績表彰受賞.